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野阿梓「伯林星列 上/下」

ひさしぶりに野阿梓っていう名前を見たなあと思って、買ってみた。
ニ・ニ六事件が成功した世界の物語で、そこだけ切り取るとなつかしの「IFの世界」モノのSFなんだけど、中身はほとんどSM。その昔、SFがSMとよく間違えられていたという話は聞いたことはあるが、この作品に関していえば、SFでありSMである。主人公はベルリンに留学している十六歳の少年、伊集院操青。彼が叔父継央の歪んだ欲望により娼館にその身を落とすことから話が始まる。物語の冒頭は操青が調教されるシーンで埋め尽くされ、正直、げんなりしてしまった。こういうのを読むと実感するんだけど、どうもKONKONにはマゾっけといものが希薄らしい。それはともかく、その調教が完了し、継央が操青を犯すあたりで、ニ・ニ六事件が発生し、そのあおりをくらって継央が日本に戻る。このあたりの流れは、継央を操青から引き離すためだけに、ニ・ニ六事件が成功させたのかと疑えてしまうポイントである。このあとも、もうひとりの主人公というべき黒澄幻洋が登場し、政治向きの話をしたりするのだが、どうしても操青が陵辱されるシーンばかりが目立っている。解説で小谷真理がいろいろ書いているけど、実のところ作品のテーマは、操青がいかに穢されたか、っていうほうだと思う。

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